色々やってみる日記

粘土フィギュアの製作ログ、うつや不安症の話、論文執筆やResearch Studentのあれこれについて。

フェアウェルディナーが催された【日記】

フェアウェルディナーが開催された。午後6時くらいにキッチンにハウスメイトが集まり出し、今日作るお料理の打ち合わせをし始める。しかし30分後くらいに「ちょっと問題があって、料理するんじゃなくてデリバリーにすることにした!何か食べたいものある?」とお皿さん。

 

うちの家の人は誰も我が強くないので、もっと我が強いメンバー(アリさんとかローさんとか)が来るまで待つことに。廊下でみんなでおしゃべり。コロナウイルスの話だったり、誰か私のネパール産のガネーシャのお面を引き継いでくれないかという話だったり。

 

そんなこんなしているうちに、アリさんがお友達を連れて登場。アリさんはいつ見てもめちゃくちゃ美人。ベリーベリーベリーショートくらいの金髪で、今日も元気いっぱい。チョコレートケーキを焼いて手土産にしてくれた!嬉しい。アリさんの決断力によって、一瞬でマレーシア料理をオーダーすることに決定。

 

そうこうしているうちに、お誘いしていたわいのイラン人の友人が到着。彼が入ってくるや否や、お皿さんが自室に駆け込んで行った。どうしたんだろう、と思ったらヒジャブを取りに行っていた。事前に来るのが男性だとお知らせしておけばよかった……大学に行くときにヒジャブを被っているのは知っていたけど、家の中だと身につけていないので、すっかり頭になかった。

 

友人は片手にワインと、片手に黄色い花束を持っていた。これでワインが3本、絶対に捌けない……笑。俺のワインが日の目を見ないことが確定した!まぁ家に置いておいたら、誰かがあげたり飲んだりしてくれるだろう、いつか。スーツケースが空いていたら、持って帰って誰かのお土産にするのもいいかもしれない。

 

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とにかく。友人とはかれこれ2年半ぶりくらいの再会だった。みんなでデリバリーを頼んでいたリビングに友人も座る。ウェンさんが周囲をうろちょろしたり飛びかかったり熱烈な歓迎。

 

「僕には13ヶ月の娘がいるんだけど、犬と赤ちゃんって愛情表現が本当によく似ているよね」と友人。

 

庭にある、アリさんが植えたユーカリの木を見せてあげる。めちゃくちゃ立派な木なので、わいらが植樹したことを知って大層驚いていた。ハウスメイトとは普段からお話しする機会が多い分、自然と友人との会話がメインになった。会っていない間どうしていたか、キャッチアップすることがいっぱいあった。どうして子供をもつ運びになったのか、とか。想像していた以上に「状況に流された」側面があって、そんなものなのかと。「この年になって思うんだ、この世の中に、僕が決断して選び取ることなんてそんなに多くない。ただいろんなことが発生して、勝手にやってくるだけなんじゃないかって」

 

 

 

そんなこんなしている間にディナーが到着!机を埋め尽くすヤミーさんのパック!お腹が暖かい。幸福だ。友人が持ってきてくれたワインで乾杯する。お互いにどれくらいペーパーワークが嫌いか、という話をしていて、隣にいたアリさんが「めちゃくちゃよくわかるわ。私は保育士をしているんだけれど、どこかを擦りむいた子がいると、そのために2ページの報告書を書かないといけないの」と。「なにそれ、絆創膏を貼って終わりで済む話なのに!」と友人。

 

本人に面と向かって言うのは恥ずかしいので、友人に説明すると言う形にして、わいがどれほどアリさんを尊敬しているかを伝えた。アリさんはすごいんだよ、この家は最初に引っ越してきたとき、悪の組織のアジトみたいなあばら屋のを、アリさんが数週間足らずで立派な家にしたんだ!キッチンのあの棚も、リビングの棚も、全部アリさんが作ったんだよ!アリさん以上にオーガナイズされた人間を僕は知らない、アリさんは本当にすごいんだ、と。あーアリさんかわいい。2018年の10月に出て行って以来会う機会がグッと減っていたけど、やっぱり4年間一緒に住んでいただけあって、会うと懐かしさでいっぱいになる。懐かしいな、アリさんのこういう空気感が大好きだな、としみじみ。

 

リビングに移動。アリさんとアリさんの友人はご飯を食べると比較的すぐに帰ってしまった。キツくハグをして、またいつか会いましょう、と約束。こういう約束は過去に叶ったことも叶わなかったこともあるけど、言っている時の気持ちはgenuineなんじゃないかい。

 

それからリビングで友人とアレさんと長く話し込んだ。主に、サムウェアー県のアカデミアについて。アレさんは両親がどっちも大学の講師だったからinstitutional politicsのようなものはよく知っていて、友人もgraduate studentsを代表して大学の会議等に出ていたので、大学という"素晴らしい知的創造の場"が、実際にはどれほど馬鹿げていて子供じみた大人同士の関係性でgovernされているかを目の当たりにしたらしい。想像以上に子供っぽい見栄の張り合いの世界なのだ。*1

 

 

 

「イランにいたときは、サムウェアー大学ではきっと知的で、genuineで、平等主義の世界が待っているんだと思っていた。でも、そんな場所は存在しなかった。それで気づいたんだ、人が集まる場所は、どこだってこんな状態になってしまうんだって」

 

「でも、そういう場所にもhumaneな人もいるよね。どれだけコラプトな場所にも驚くほど立派な人もいるんだ」

 

「わかるよ。僕がpostgradの代表をしていたときに、サムウェアー大学で3年〜4年間でPhDを取れなかった学生にペナルティを与えるという新しいレギュレーションを導入する話が出てた。一人の教授が言ったんだ、彼女は素晴らしい人だった。『学内には必ず学生を3年から4年でPhD取得に導いている指導教官がいます。ペナルティが与えられるべきなのは、指導教官の方じゃないでしょうか』ってね」

 

話はお互いの研究について。特に僕の研究テーマがどれほど政治的にセンシティブなエリアかという話に。友人は僕のことを引くくらい褒めてくれる。褒めちぎる。本気で言っているのがわかるから、ツッコめなくて困る。

 

「数年前に、whatchamaと2人で5時間くらい話をしたことがあったよね。あの時、僕はとてもとても重たい荷物を心に抱えていた。二人で罪悪感(guilt)について話していたときだ。君と5時間話をして、帰ってから気づいたんだ。胸に抱えていたものが消えていると。そして、それはそれから二度と戻ってこなかったんだよ」

 

わーーーーー。

 

「僕は最初の指導教官から次の指導教官に変わった時に(最初の指導教官からアカハラを受けていた)、この人に多くは期待しなかったんだ。世界を変えるような、自分が誇りに思えるような研究はしなくてもいい、ただこのPhDを終わらせることを目標にして、それを達成した。whatchamaにも同じことを言おうと思っていたけど、今日話していて思ったんだ。あなたの研究は重要なものだ、とりあえず学位を取ることを目標にして終わらせるのは勿体無い。僕はそれをしなかったけど、あなたは最善の研究をするべきだ」

 

わーーーわーーー。

 

(キッチンにいたときにも「僕はいつも君に驚かされる。君は話がとても上手なんだ。僕は君ほどarticulateに自分の思考を説明できる人間をほとんど知らないよ」と言ってくれて、「You know why?なぜだか分かる?それは私が他人と喋る代わりに、いつも自分とばかり喋っているからだよ!」と答えたら、わいの人見知りアンド引きこもり習性を知ってる通りすがりのアリさんが爆笑。)

 

そうこうしているうちにもう11時近く。友人がUberを呼んだ。こそっと秘密話をして、車を見送った。もしこれから先のプロセスで僕が必要になったらいつでも呼んでほしい、と言ってくれた。

 

 

 

中に入って、いつものハウスメイト+ローでおしゃべり。話は最近(私以外の全員が見ている)テラスハウスの話題に。いつの間にそんなにグローバルになっていたの!?と思ったら、Netflixの影響らしい。「そもそも3x3くらいしか選ぶ選択肢がないのはキツイよね、あとシェアハウスみたいなもんだから、ハウスメイトとデートするという考えがそもそもキツイ」「全員がバイセクシャルだったらもうちょっと選択肢が広がるのにね」と。なんのために見てるの?と聞くと、やっぱり文化的な違いが楽しいのが10%の理由で、残りの90%は「司会者がめちゃくちゃ面白いから」だそう。テラスハウスの司会って誰?山ちゃん?

 

ローはおしゃべりが軽快ですごく面白い。社交性のグラフがあったら、棒の長さが私の25倍くらいあると思う。あとは『Unreal』というテレビシリーズの話や、タイトルを忘れてしまったけどジェンダーがあやふやなブッチがトイレで取り乱すシーンがあるドラマの話など*2。最近『現代思想』に載った千田さんの論考が「トランスフォビックな言説ではないか」という批判をよく目にしていた。このお家はみんなクイアかクイアフレンドリーで、クイアなのが『わいらの普通』だから忘れてたけど、このキッチンにもトランスジェンダーとインターセックスの当事者おるんか、と。そういうカテゴリーも存在したっけ、と急に気付く。

 

「女子トイレに入って『間違えてませんか?』みたいな目で見られるのには慣れているけど、それでもあんな風に取り乱したりするかなぁ?と思って。リアルなんだけど、私のリアルの反応とは全然違うから、なんか違和感というか」「でも、あのとき主人公エクスタシー使ってたからじゃない?」そんな会話。わいにとっては(家の中だけで会う)家族のような人たちが、公共のトイレとかを使うときにそういう思いを日常的にしているんだという、唐突に別のリアリティが介入してくる感じが。

 

そしてローも帰った。「何か不用品があったら、段ボール箱に突っ込んどいてくれたら私がオプショップに持って行くから!全然気にせず頼って!」とのこと。ローとはめちゃくちゃ付き合いが長い(6年間知り合い)のわりに、友達という関係には微妙になれなくて。こんな風に楽しく過ごした後では、人見知りなんてせずにもっと積極的に話しかけたら良かったなぁなんて遅ればせに思う。

 

時計を見たらもう午前の12:40。

 

途中に睡眠障害、うつ、不安障害を挟んで全く部屋から出てこれないような時期があったとはいえ(圧縮したら2年くらいにはなりそう)、やっぱり6年半一緒に過ごした人たちとの別れは寂しいです。ハウスメイトという関係性は友人よりは希薄で。でも何でもない時間を一緒に過ごすのは、やはり家族に近いものがある。辛いことの方が圧倒的に多い6年半だったけど、この家だけはいつでも私を守ってくれた。変わらない安心と安全を提供してくれる基盤だった。こんなについていることはないよ。いまの気持ちを表せる言葉があるとすれば、それは「さみしい」以外にない。

 

 

 

*1:医龍、白い巨塔、ブラックジャックによろしくで医大の教授がやってるらしい愚かな政治ゲームに似ているのかもしれない。ちなみに友人は博論を出した今はサムウェアー大学で非常勤をしている。「労働量と対価が全く見合わない」「大学からすれば僕などは掃いて捨てるほどいる、いつでも捨てられる労働力にすぎない」と言う言葉にはもはや驚きはない。世の中には飲食とかアパレルとかメーカーとか清掃とかITとかいろんな職業があるけど、大学ほど夢も希望もない職種もないような気がする。プレカリアートになるのも地獄、成功してinstitutional politicsに参入するのも地獄……俺は博論を終わらせる気しかないけど、その後の職業に関しては「すがりついてでもアカデミアに!」とは思わなくなった。

*2:多分『Work in progress』かな?